この記事は2026年8月1日時点の公表情報をもとにしています。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。制度の適用条件は個々の状況で異なるため、必ず記事末尾の公的窓口で最新情報をご確認ください。
何が起きたか(事実の整理)
2026年7月28日16時27分、熊本県でマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測しました。県の発表(7月30日時点)では、関連調査中を含む死者は34人、約390カ所の避難所に9,196人が避難、8市町で約7万9,700戸が断水しています。
2016年の熊本地震とは震源も被害の中心も異なる、新たな大規模災害です。
工場・現場への影響:操業停止が相次いだ
今回の地震は、熊本が半導体・製造業の集積地になっていたタイミングを直撃しました。主な影響(7月末〜8月1日時点)は次の通りです。
| 企業・工場 | 状況 |
|---|---|
| ソニーセミコンダクタ(菊陽町) | 地震直後から生産停止 → 8月4日から段階再開、8月中旬に地震前の水準へ復旧見込み |
| TSMC/JASM(菊陽町) | 従業員が一時退避。建物の安全確認を完了し操業を段階的に再開。隣接の新工場建設は一時中断 |
| ルネサス、三菱電機など | 県内工場の稼働を一時停止 |
| 日本製紙 八代工場 | 事故により死者8人。操業停止 |
| 自動車・部品各社 | 九州各地で操業取りやめが相次いだ |
建設・土木の現場も、余震への警戒と安全点検のため多くが一時中断となりました。
働く人にとっての意味: 工場が止まる=そこで働くアルバイト・期間工・派遣社員のシフトと収入が直接影響を受けるということです。次の章から「給料はどうなるのか」「何が使えるのか」を整理します。
休業中の給料はどうなる? まず知っておくべき基本
原則:「休業手当」は給料の6割以上
会社の判断で従業員を休ませる場合、法律上、**平均賃金の6割以上の「休業手当」**を支払う義務があります。これは正社員だけでなく、アルバイト・パート・期間工・派遣社員にも適用されます。
ただし「不可抗力」の場合は例外がある
地震で工場や店舗そのものが壊れて操業できないような場合は「不可抗力」とされ、会社に休業手当の支払い義務がないケースがあります。一方で、建物は無事なのに会社の判断で休ませている場合や、部品が届かないなどの間接的な理由の場合は、支払いが必要とされる余地があります。
ここがポイント: 「地震だから給料ゼロでも仕方ない」と自己判断しないでください。休業の理由によって扱いが変わるため、後述の労働局・ハローワークの相談窓口で確認する価値があります。
期間工・派遣社員が知っておくべきこと
- 契約期間の途中での打ち切り(雇い止め・派遣切り)は、災害を理由でも簡単にはできません。やむを得ない事由が必要とされ、派遣の場合は派遣会社(雇用主)に新しい就業先の確保など雇用維持の責任があります
- 会社の寮に住んでいる場合、契約終了と同時の退去を迫られるトラブルが過去の災害でも起きています。即日退去に応じる義務は原則ありません。困ったら相談窓口へ
- シフト制のアルバイトでも、すでに確定していたシフトを会社都合で削られた場合は休業手当の対象になり得ます
使える支援制度まとめ
働く人が使える主な制度を図にまとめました。
1. 雇用保険の特例措置(発動済み)
今回の地震では災害救助法が適用され、厚生労働省が雇用保険の特例措置を実施しています。ポイントは:
- 勤め先が地震で休業し、休業手当を受け取れない場合、会社を辞めていなくても失業保険(基本手当)を受け取れる特例があります
- 一時的に離職を余儀なくされた場合も、再雇用予定があっても受給できる特例があります
手続きはハローワークです。雇用保険被保険者証や本人確認書類を持って相談してください。
2. 雇用調整助成金(会社が使う制度)
会社が従業員を休ませて休業手当を払う場合、国がその一部を助成する制度です。過去の大災害では特例(助成率の引き上げ等)が設けられており、今回も同様の対応が見込まれます。
働く側から見ると、「会社がこの制度を知っているかどうか」で休業手当が出るかが変わることがあります。会社が「払えない」と言っている場合、「雇用調整助成金は使えないのですか」と確認してみる価値があります。
3. 労災保険(勤務中にけがをした場合)
勤務中に地震で被災してけがをした場合、状況により労災保険の対象になります(治療費・休業補償など)。
- アルバイト・派遣・期間工など雇用形態を問わず対象です
- 労災保険は会社が保険料を全額負担する制度で、労働者に費用負担はありません
- 会社が手続きに消極的でも、労働基準監督署に直接申請できます
4. 住まい・生活の支援(地震保険・公的給付)
- 地震保険: 火災保険だけでは地震による損害は補償されません。地震保険に入っている場合は、片付ける前に被害箇所の写真を撮り、保険会社に連絡を
- 罹災(りさい)証明書: 市町村に申請。各種支援金・減免の入り口になる重要書類です
- 被災者生活再建支援金: 住宅の被害程度に応じて最大300万円
- 災害弔慰金・災害障害見舞金: ご家族を亡くされた場合など
- 税金・保険料・公共料金の減免や支払い猶予も各窓口で受付
5. 会社が倒産してしまった場合
災害の影響で会社が倒産し給料が未払いになった場合、未払賃金立替払制度で未払い分の一部(原則8割)を国が立て替える仕組みがあります。
今やるべきことチェックリスト
- 記録を残す: 給与明細・シフト表・雇用契約書・会社からの休業指示(LINEやメールも)を保管する
- 写真を撮る: 住まいや家財の被害は片付ける前に撮影(保険・罹災証明の証拠になります)
- 罹災証明書を申請する: 住まいに被害があれば市町村へ
- 地震保険の有無を確認する: 自分と家族の契約を確認し、該当すれば早めに保険会社へ連絡
- 一人で判断せず相談する: 給料・雇用のことは労働局・ハローワークの特別相談窓口へ(無料)
復旧関連の仕事・アルバイトを探すには(8月26日追記)
検索で「熊本地震 バイト」と調べている方が多いため、復旧関連の仕事の探し方を追記します(職種別の詳細は災害復旧の仕事ガイドにまとめました)。過去の大災害の例では、応急対応が一段落した後に復旧・復興関連の求人が数ヶ月〜数年単位で増えていきます。
増えるのはこんな仕事
- 住宅の補修・解体: 屋根・外壁の応急処置、罹災家屋の解体工事(車両系建設機械や石綿の資格者は特に重宝)
- インフラ復旧: 道路・橋の補修、上下水道の復旧工事、インフラ点検
- 土木作業員・交通誘導: 未経験可の募集が最も多い分野(未経験からの始め方)
- 工場の復旧支援・増産対応: 設備の点検・復旧後の増産に伴う製造スタッフの募集
探し方と注意点
- ハローワークが起点: 災害後は復旧関連求人がハローワークに集まりやすく、雇用保険の特例相談と同時にできます
- 「日当◯万円」だけで飛びつかない: 災害後は宿泊環境や安全対策が不十分な違法・グレーな募集も混ざります。雇用契約書の有無、労災保険、宿泊条件を必ず確認してください
- がれき・解体作業は資格と保護具: 倒壊建物の解体では石綿(アスベスト)対策が法令で義務付けられています。防じんマスクの支給がない現場は避けてください
- ボランティアと仕事を区別する: 災害ボランティアは無償です。「ボランティア募集」の名目で実質労働をさせる募集には注意を
今後の見通し
- 半導体各社は8月中の復旧を見込んでおり、製造業の雇用への影響は現時点では短期にとどまる可能性があります。ただし余震や点検結果による変動はあり得ます
- 今後は住宅の補修・解体、インフラの復旧など、復旧を支える建設・土木の人手が長期にわたって必要とされます。県外からの応援を含め、復旧関連の求人は増える見込みです
- 熊本の半導体投資(TSMC第2工場など)は中断を経つつも継続の方向で、地域の雇用基盤そのものが失われたわけではありません
先月・今月の市場全体の動きは8月の転職市場レポートをご覧ください。
相談窓口(まずはここへ)
- 熊本労働局・各ハローワーク: 雇用保険の特例、休業手当、解雇・雇い止めの相談
- 労働基準監督署: 労災保険、未払い賃金
- 市町村の窓口: 罹災証明書、生活再建支援金、税・保険料の減免
- 契約中の保険会社・代理店: 地震保険の請求
出典・参考(2026年8月1日時点): 厚生労働省「令和8年熊本地震について」、厚生労働省「雇用・労働に関する特例措置や支援制度」、国土交通省 被害状況、熊本日日新聞(被害状況)、熊本日日新聞(県内各社の操業停止)、日経クロステック(半導体工場の生産停止)、EE Times Japan(半導体メーカー各社の対応状況)、連合 災害時のワークルールQ&A、補助金ポータル(被災者が使える公的支援まとめ) ほか。